東洋医学松柏堂医院

東洋医学松柏堂医院

食べるクスリと服用するクスリ

4:アブラナ科の食べるクスリ
4-3: 大根・莱身子


 四季を通じてもっともよく食べる機会の多い野菜は大根? キャベツ? 実際、現在は「時なし大根」という品種が多く、四季いつ播いても3~4ヵ月で立派な大根ができます。
 葉には農薬がかかっているから食べないし、第一スーパーでは葉はすでに落とされています。根っこの野菜=根菜類は比較的安心して食べられる野菜。一般に根菜類は農薬の心配が比較的少ない。今流行の青首大根は、葉は少々虫喰いされても大丈夫ですから、薬草園でも完全無農薬でそう手間もかけずできる野菜です。 バラバラと、畝に播いて、育ってくると間引きをしますが、それがおいしい。可愛い葉と根をまるごと茹でてむしゃむしゃと、最後に間引くまで相当に食べられ、30cmくらいの間隔の一本立ちになってからはゆっくり大きくなるのを待ちます。収穫に便利なように最近の品種は白い根の部分が地上に大分浮き上がります。そして特別のものでないかぎり冷蔵庫に横に入るくらいの大きさになっていますから、収穫のとき腰を痛めるほど大変ではありません。

 さてアブラナ科には菜の花、キャベツ、白菜、ブロッコリーのように地上部を食べるものと、大根のように葉よりも根を食用につくられたものと二通りあります。収穫せず放っておくとキャベツ畑も大根畑もみな「菜の花畑」になり区別がつきません。

 大根は4000年以上前からエジプトで栽培されていたという。後にヨーロッパに伝わり、中国を通じて日本へ伝わったようで、中国名の莱菔(ライフー)は西域の言葉の音訳といわれます。日本では古来「オホネ」と呼ばれ、または春の七草の「スズシロ」という言い方もあります。『本朝食鑑』に「大根は能く穀を消し、痔を除き、吐血鼻血を止め、麺類の毒を消し、魚肉の毒、酒毒、豆腐の毒を消す」とありますが、大根おろしを何にそえて食べるか考えるとすべてなるほどとわかります。
 そういうわけで大根を食べていれば食あたりはしない、だから、めったに当たらぬ役者は「大根役者」です。 農薬がかかっていないなら、葉っぱも食べてほしいですが、もし多めに手に入ったらよく干してから浴剤として使うと温まってよいですよ。

 種子は漢方薬として使われる莱菔子(タイフクシ)です。大根のピリッとした成分から想像されるようにつよく胃腸を刺激して下剤の働きもありますが、炒めて薬性をマイルドにしてから消化剤、鎮咳剤として使われます。


pagetop