食べるクスリと服用するクスリ
4:アブラナ科の食べるクスリ
4-4: なずな [薺菜(せいさい):撫菜:ペンペン草]
春の畑の花といえば菜花。大根・蕪・ブロッコリー・キャベツなどもみなアブラナ科で、抜かないで畑に放置しておけばどれも「菜の花畑」になります。
アブラナは、漢字で書けば「油菜」ですから、葉がたっぷりと滋味に富んで、私の大好物。この冬は畑に植えてあった菜ッ葉(何の菜ッ葉だか分らなかったが)をずーっと摘んで食べていて、年を越して一月も二月も緑に事欠きませんでした。
セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ、春の七草。みなさんはどう覚えましたか。地方や人によって、ゴギョウがオギョウだったり多少の違いがあるようです。このうち、アブラナ科はナズナとスズナ(蕪)とスズシロ(大根)。
このシリーズでこれまで紹介したアブラナ科の食べるクスリには、ワサビ・カラシ菜・大根(莱菔子)があります。
そして今回のナズナは、日本各地ばかりでなく北半球の温帯地に広く分布し、原野・路傍・庭と何処にでも普通に見られるアブラナ科の越年草。高さ10~40センチ。全体に粗毛があり、根出葉は羽状に大小、不規則に深く切れ込み、冬の間は地表にくっついてロゼット状。
春になると直立した茎が伸びて、その先に総状花序を作って白い小型の十字花を多数つける。
果実は長い柄があり、倒三角形で三味線のバチ=撥を思わせるところから、ペンペン草とも呼ばれる。
ナズナは「撫菜=なでな」から転じた名で、「撫でる」→「めでる」に転化し、「愛でる菜」の意味だといわれます。
1月7日の朝、七草粥に入れる風習があるほか、和え物やおひたしで食用になる。
生薬としては、全草を薺菜「薺菜=せいさい:さいさい」という。コリン、アセチルコリン、ブルシン酸を含み、健胃・消化器出血予防・肝炎に、喀血・吐血・産後の出血・血尿・目の充血などの止血に民間薬的に用いられる。
なお食用にはならないナズナという意味で、近縁のイヌナズナがあり、これの種子は「蒂藶子=テイレキシ」といって漢方処方に配合されます。