東洋医学松柏堂医院

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食べるクスリと服用するクスリ

6:お酒の類
6-1: 屠 蘇 酒


 正月に因んで「おとそ」のはなし。ひとつの生薬でなくて、古典では「大黄、桂心、白朮、桔梗、バッカツ、蜀椒、防風、烏頭」の八つの生薬をお酒につけたものです。もともと伝染病を防ぐためのくすりですが、大黄と烏頭はつよい薬ですから現在ではそれらをぬいた、桂心(シナモン)、白朮(オケラ)、桔梗(前回紹介)、バッカツ(ユリ根の一種)、蜀椒(サンショウ)、防風(ボウフウ)など、身体を温めて風邪にかからないような薬を用いてます。甘みをます甘草や陳皮(みかんの皮)なども入れるとよいでしょう。現在ではそれぞれの「おとそ」が工夫され年末に売られるようです。

 中国の唐の時代の『外台秘要』という綜合医学書には、それよりずっと以前より伝わってきた正月の風習について以下のように記しています。「屠蘇酒は、疫病から人を守る。(上述した)八種の生薬を刻んで紅い袋に入れ、大晦日に井戸につけておく。これによって井戸水を清らかな聖なるものにする。正月早朝、日の出とともにそれを取り出して、こんどは酒で煎じる。東方に向いて一家で飲む。飲む順序は年齢の小さな子どもから年長のものへ。量は自由。一人が飲めば一家が無病・無疫。一家全員が飲めばその家の一里四方が無病無疫。三日たったら煎じかすを再び井戸へつける。そうすれば一年中無疫である云々」。この記述はそれより約200年後に日本でまとめられた最初の綜合医学書『医心方』にも踏襲されていますが、もっと古くから正月の風習としては日本でも同様のことが行なわれていたといいます。紅い袋は「茜の絹を四角く縫ったもの」が正式。

  人類の医の長い歴史がつい最近まで(発展途上国では現在も)、疫病(伝染病)との闘いであったことがあらためてわかります。

 屠蘇の字の由来はよくわかりません。屠殺の屠の字ですから正月早々縁起がわるい。そういう植物(薬草)があるという説もありますがどういう意味でしょうか。御存知の方は御教示下さい。

 年齢の若い順に飲むというのは、年長のものが若さにあやかるという意味合いがあるというのが普通の説ですが、薬というものは王(家長)が服用する前に家臣(子どもたち)が先ず毒味をするものだ、という習慣からきているというやや意地悪い説もあります。  それでは無病を祈って乾杯!


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