ときどきの老い
14: 2011年3月号
睡眠・年寄り型――2
年寄りは不眠がちになる。これは皆さんに共通の実感であるらしい。
眠剤をずっと服用している、心配事が多くて、頭が冴えて寝付けない、などは年齢とは直接関係ないので省くと、夜間の尿意・セックスの減少・運動不足などが主な理由でしょう。
セックスがよい運動で、入眠効果が大きいことは知られていますが、老人にはそれが失われる。普通の運動はどうか? 私の場合は、ヨガ・太極拳・自彊術など、いろいろやっていますし、自転車通勤もしていますが、それらを十分にやった、かなり疲れた、と思える日のヨルは、夜間に目を覚ます時間がかなり明け方に近い。うまくいくと朝までもってしまう。
なんだ、こんな簡単な理由か、疲れるまで運動する、それでいいのか、と思います。たしかに若いとき以上に必要な心懸けでしょう。年寄りは「頭ばかり昂ぶって」「身体は疲れていない」ことが多いからです。
それにしても、眠りが浅い。ちょっとしたことで目が醒めてしまう。これは以前に書いた「昼間のうたた寝」の裏返しですね。昼食後など、睡魔に襲われてあっという間に「落ちる」。私なんかは、首がガクンと「落ちる」。またその次の瞬間に、居眠りなんかしていましたか?みたいな何食わぬ顔もできる。
ヒルもヨルも覚醒と睡眠の間の垣根が下がってきているのです。行き来が自在。まさに生と死のレッスンをしているのだ思いましょう。眠いヒルにうたた寝を我慢するのが身体によくないように、夜中に絶対眠ってやろうと悶々とすることも身体にわるいです。
早朝4~5時に尿意で目覚めちゃったらどうするか。「二度寝」の問題ですね。私は躊躇なく床から離れます。でもそのあとが立派ではない。早朝の散歩に出たり、新聞をとったり、コーヒーを涌かしたり、PCに向かったりしない。丹前にくるまってテレビの前に座る。テレビショッピングや天気予報。小一時間もすれば眠くなりますよ。
さあ「映画」を見よう。夜明けのロードショウ。目眩く展開する、他人には云えない、自分でも説明のつかない、時空を超えたありえない映像芸術、そうです「夢」です。映画好きにはたまらない。無料で、こんな時間に、フトンの中でぬくぬくと、タップリ楽しめます。
七時半ころに目が醒めて、うん、タップリ映画を見たな、登場人物の多彩さとその変幻自在ぶり、あれはいったい誰だったんだ、消えてゆく印象をニンマリしながら味わう。夢見がちな老人の一日の始まり。