東洋医学松柏堂医院

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ときどきの老い

12: 2011年1月号


赤ちゃんに頬ずり
 車の生活をやめて、よく利用するようになった都バス。わざわざ遠回りして、バスの中で読書、というおはなしをしたのは半年前。
 バスに乗っていると、目につくのは、お年寄りと赤ちゃん。通勤通学の時間帯なら、その中間の現役世代も乗ってくるけれど、やはり電車などと違って、殺気立っていない、どこかノンビリしている。
 なかでも愉しいのは、ベビーカーの赤ちゃん。若いお母さんは、外から運転手に合図すると、後方の降り口ドアを開けてもらい、ベビーカーごと、よっこらしょ、と乗車してくる。今時の若いママはベッピンさんだから、その力業とのギャップに思わずニッコリしてしまう。乳母車取り付け場所で、カチカチ。運転手さんは、その固定作業が一段落して「大丈夫です」と母親が大声で知らすまで発進しない。
 人間関係が希薄とか、世知辛い世の中、と言われる中で、このバスの運転手さんのマナーにはいつも感嘆する。電車や新幹線にはない「あたたか味」があるな~、都バスしみじみ好き~と、こちらの心がほぐれたところに赤ちゃんの顔が目にはいる。
 大人の女性に笑いかけたら、アババー・ウーバッ、ウーウンマッ、とやったら軽犯罪。赤ちゃんにならいいんでしょ。赤ちゃんと視線が合って笑顔の反応があればたまらない。赤ちゃんと一期一会の交流です。
 若いときは嫌いだった幼児や小児。赤ちゃんに頬ずりしたくなったのは、還暦すぎてからでしょうか。まことに愉快な老人力がついてきたものです。


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